1.基本構想
化学物質による環境への負の影響(リスク)とベネフィットを評価し、そのバランスにたって化学物質の管理原則を導くことを目的とする。最終的には、化学物質に関する環境政策に科学的な根拠を提供することに資する。これに類する研究は数も少なく、まだ緒についてばかりなので、評価の手法開発や全体の枠組みの構築に力点をおく。特に、人の健康リスク評価手法、生態リスク評価手法の開発に重点をおいている。いくつかの代表的な化学物質についてのケーススタディーを行い、それらのfeasibilityを検証する。工学、生物学、経済学の研究者による学際的な研究を目指す。
2.研究の内容
I.化学物質の環境中での挙動モニタリングとモデリングによる予測
I-1.fate modelの開発
(1)汎用モデルの探索・実用性の検討
(2)GISベースの地域に密着した矢田川モデルの構築
I-2.モニタリングとモデルの検証
(1)ダイオキシン
(2)ベンゼン
(3)室内汚染物質
(4)河川水中の内分泌系攪乱物質
I-3.反応メカニズムの研究
II.生態系の多様性等に関するフィールド調査と毒性調査 II-1.水系で化学物質が生物に与える影響を評価するための実験・調査
(1) 化学物質の毒性試験(生態リスク評価に必要なパラメータ情報の獲得)
II-2.生物種の多様性に関する土壌系での研究
II-3.生物種の多様性に関する植生のfield調査
II-4. 生物種の多様性に関する水系でのfield調査
III.評価手法に関する研究 III-1.ひとの健康リスク評価手法の開発
III-2.生態リスク評価手法の開発
(1) 基本的な単一集団は拡散近似を使い生態リスク評価モデルを構築、メタ
個体群での評価モデルも構築
(2) 生命表を現実の系に応用して絶滅確率を計算する
(3) 面的な開発による絶滅リスクの算出
(4) 種の相互関係を考慮した生態リスク評価モデル
(5) 種の重みづけ
III-3.統合評価手法の開発(全体のまとめ)
(1) リスク・ベネフィット解析
3.研究の実施体制
横浜国立大学と九州大学を拠点にして研究を行う。横浜国立大学では、環境科学研究センターの11名の教官を中核にしつつ、複数の他学部教官及びいくつかの国立研究機関、他大学教官のからの参加を得て研究を進めている。横浜国立大学環境科学研究センターの多数の研究者が一つの研究テーマに取り組んでいることが、研究の質を向上させ、また、統合的な研究を可能にしている。米国ハーバード大学リスク解析研究所所長J.
Graham教授、The Cadmus Gruop, Inc., Oak RidgeのS. Bartell博士との共同研究も続けている。
Last Update: 22. Aug. 2002