56−2005.10.14「東南アジア環境鑑識学国際会議の報告」

ちょっと間が空きましたが、9月19日〜21日に台湾、台北市で開催された「東南アジア環境鑑識学会議(Southeast Asia Environmental Forensics Conference)」に出席してきたので報告します。台湾は近いが初めての訪問でした。
 まず台北市ですが、市内・郊外の高速道路や幹線道路が結構立派に整備されていました。車線も多く、市内の大通りは片側3〜4車線あって、中央の二車線がバスの専用レーンになっています。一般車は全く入りません。この辺は交通ルールがよく守られています。市内の交通量も大変多く、通勤時間帯には二輪車(特にバイク)の大群が走っています。また、地下鉄も整備されていますが、切符を自動販売機で購入するとカードが発行され、改札出口で回収されて再利用されていました。これは合理的です。市内の建物の様子は日本の都会と変わらない雰囲気なのですが、個人の住宅がほとんどないとことが相違点かも知れません。それから、屋台の店が道に並ぶNight Marketなど露天商が盛んな様子でした。全体として治安は良いようです。
 台北は国際空港が中正機場で、台北市の中心から車で小一時間ほど離れており、鉄道はないのでバスなどで移動することになります。もう一つ、市内と言って良い程近い場所に国内線用の松山機場(空港)があります。これは、日本の首都圏が、国際線と国内線を成田と羽田で分業しているのと全く同じです。台北に住む知日家が曰わく、「以前は松山機場から羽田空港に飛べて東京は非常に近かったが、中正機場と成田空港になって日本は非常に遠くなった」とのこと。

 肝心の会議ですが、国際環境鑑識学会(International Society of Environmental Forensics)、台湾環境保護署、台湾工業技術研究院の三者の共催によるもので、台湾での開催は2回目でした。会議で発表をする人の参加費は免除、しかも、レセプションと懇親会が合わせて三夜も持たれ、それらも参加者は全て招待だったことからもわかるとおり、台湾の政府機関が全面的に資金的に支援しているようです。会議参加者は120〜130名程度だったと思われますが、大部分が台湾の人で、30〜40名程度が他のいろいろな国からの参加者でした。少なくとも、韓国、中国、日本、タイ、ベトナム、米国、イギリス、アイルランド、ドイツ、カナダ、フィンランド、ブラジルなど、世界の各地から参加がありました。外国からの参加者としては韓国や中国からの人が比較的多く、日本からは4名でした。
会議で特に目立ったのは台湾からの発表で、種々の工場などからの汚染物質の排出状況をデータベース化するとことに国として非常に積極的に取り組んでいるということがよく伝わってきました。これは廃棄物の投棄などによる汚染サイトの原因者特定に役立てたいということらしい。このような積極的な取り組みが、この学会を台湾へ呼んでくる基盤となっているようです。
 会議の発表の内容としては、汚染原因の解明や汚染者寄与率の推定という鑑識学の中心部分まで解析が展開されているものは少なく、多くが、分析した結果の報告や汚染源情報を収集整理している段階の報告にとどまっていました。この点は、参加者としては期待したレベルの発表が少なく不満でした。しかし、こぢんまりした会議だったので、人的な交流は結構できたのが収穫です。比較的安い費用で国際学術交流と台湾料理を堪能するのには適した会議です。次回開催は2年後の予定。

 最後に、観光について一言。故宮博物館や台北101の高層ビルも良かったのですが、最も印象に残ったのは朱銘美術館でした。個人の美術館ですが、屋外の広い庭園に彫刻やブロンズ像が多数に並んでいるが、それぞれが個性を持って主張していました(写真)。是非お勧めです。