53.−2005.7.19 松井三郎氏の中西準子氏に対する名誉毀損訴訟を検証する
(その6)第2回口頭弁論の速報
検証作業を継続すべく、7月15日に第二回口頭弁論を傍聴してきたので速報する。
定刻の10時30分までに横浜地裁905法廷のラウンドテーブルに関係者が揃った。裁判官など裁判所の方3名。原告側は第一回と同様に中下弁護士ひとり。被告側は中西準子氏と弘中弁護士(親子)の3名。傍聴者の方は第一回より増えて19名。これは、傍聴席がちょうど満席という状況。満席なので、遠慮された方がいなかったかは不明だが。
10時30分を少し回って、裁判長の発言により弁論が始まる。まず、原告側に準備書面1(反論)の提出を確認した後、内容について簡単に説明してくださいと、原告側に促す。発言内容を聞き取ろうと努力したが、中下弁護士が早口だったせいもあり、わかりにくい印象であった。それでも、以下のように要約できそうだ。
学問的見地からの批判は、認める。しかし、被告の批判は、誤った認識に基づくものであり、学問的な批判にあたらない。原告は、「専門家としての判断も加えずに、新聞記事をそのまま掲げて問題があるような話をした」わけではないので、その部分の立証抜きに、学問的批判の自由という抗弁はなりたたない。
また、「新聞は、往々にして、ニュース性のあるものを優先して、しかも刺激的な見出しを付けて掲載するのであるから、センセーショナルな見出しのついた記事を、、、」という被告の見方も極めて一面的で、記事になるまでには客観的事実に基づくものかどうかの観点から二重三重のチェックが行われている。被告の主張は新聞報道関係者に対するいわれなき批判に他ならない。
このように、被告は主張の前提に誤りがあり、学問の自由に関する問題ではない。
以上のような内容の中下弁護士の説明があり、その後、裁判長から証拠となる甲1から9号証を提出することの確認がなされた。次いで、裁判長から被告側の提出書面の確認があった。被告側の証拠書類としては、乙1号証(被告の著書「環境リスク学」)、乙2号証と乙3号証(著書の書評)、それに、乙4号証(第7回内分泌かく乱化学物質問題に関する国際シンポジウムのプログラム・アブストラクト集)となっていた。
ここで、裁判長が次回続行しましょうと提案して、審理は終了した。8月は休廷とかで、次回の日取りは9月に。3者の都合がなかなか合致しなかったが、結局9月29日(木曜日)11時30分からと決まった。全体が約15分程度の審理で閉廷となった。裁判とは、ゆっくりしたものだと唖然。判決は何時になることやら。
さて、ここからは感想などである。今回は原告の反論があったのだが、中下弁護士がプレスリリース(http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/keijiban/keijiban_master.html)において、本訴訟に至った経緯として、「本件は、決して、松井氏が個人的な名誉回復だけを求めて提訴したものではない」の(2)として書いた主張は、さすがになかった。ということで、名誉毀損の事実の有無を中心に審理されることになると考えられる。そこで、松井三郎氏が講演でナノ粒子について紹介した際の発言が専門家として適切なものだったかが問題になる。また、中下弁護士が主張した新聞記事が十分に検証されているのかについては、今回のナノ粒子の記事が十分に検証された内容だったのかが問われるべきと思われた。この辺りの審議がどうなるのかも気になる。
もう一つ報告すべきことは、今回の傍聴者の顔ぶれが広がって来たことだ。すなわち、内分泌かく乱やリスクといった環境問題に関心がある方だけでなく、言論の自由(特にネットでの言論の自由)に関してこれまで発言されてきた人々が多数傍聴に来られたことである。この訴訟が、単なる名誉毀損訴訟でなく、言論の自由の圧殺という側面がある点が注目を集めているのだろう。
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