インバース・マニファクチャリング:「写るんです」のリサイクル (1998.11.18)
 

 富士フィルムの「写るんです」の再生工場へ行った(1998.11.13)。といっても、残念ながら新工場への移行期にあたり実際に見ることはできず、フィルム工場の見学とリサイクルに関する詳しいビデオ説明を受けられただけであったが。

 「写るんです」は成功商品で、これまで不成功に終わった「簡易なカメラを作る」から、「フィルムにレンズをつける」へ概念を変えて成功したという。そして、手頃な値段、手軽でありながらそれなりの性能などが市場に受け入れられた理由であろう(性能で言うとコンパクトカメラに劣らないという)。現在は100%リユース・リサイクルを達成していると豪語している。ここで言う「リユース」は部品をそのまま再利用すること、「リサイクル」は原料に戻して再成形などをして再利用することを指している。

 再利用成功の要因は、現像のために写真屋さんやラボに回収される比率が非常に高いこと。最初から分解して再利用するという設計が施されている点である。いわゆる「インバース・マニファクチャリング」である。

 回収品の種類別仕分け、分解、クリーニング、補修、検査などの工程はすべて機械がやる。組立工程の逆をやるわけである。分解再利用しやすいよう、ねじでなく爪止めによる組立、ストロボ部分の一体部品化などがなされている。こうして、

・外側の保護紙、ラベルは古紙としてリサイクル、

・前後のカバー、巻き上げノブはプラスチックとして再生原料に(傷などがついているためリユースはしにくいらしい。一種のプラスチックに統一し再生しやすくしている)、

・電池は消耗していないものは社内で他用途に利用、

・本体・プラスチックレンズ・ストロボ・メカ部分は、クリーニング、補修、検査をしてそのまま再利用、

がなされる。

 ストロボでリユースされる割合は95%程度で、その他の部分はそれより劣るようだ。リユース率を上げるには良い部品が必要だが、それはコスト高につながる。そこで、適当な性能というのがあるらしい。もう一つ良い部品を使ってでリユース率を上げることが社として得にならない点がある。それは、フイルムだけ詰め替えて売るという商売をする小企業が現れたことだ。製品の回収率は70%程度だそうで、意外に低い。低め理由のひとつに詰め替え業者の存在もあるのかもしれないが、30%は高すぎる。富士フイルムとしては、使用後の本体にも知的所有権を有するとして詰め替え業者に対して訴訟をおこしているようだ。

 何れにしても、現実にここまで再利用される商品が既に存在することに驚いた。社では「レンズ付きフィルム」と称し、「使い捨てカメラ」という言い方を嫌っている。今回の見学で、「使い捨て」という悪いイメージは確かに払拭できた。だが、再利用できれば環境にやさしい商品なのだろうか? 私は自分のカメラにフイルムを入れ換えることで不自由は感じていない。

1998.11.18 益永茂樹